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〈ちょうどいい 着る暮らし〉を創造する
坂口彩香の『ちょお〜ど・いい◎ 通信』 第9信
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・2024年9月25日 配信・
〔目次〕
◇ ちょお〜ど・いい 静かさ
◇ あとがき
◇ お知らせ
ちょお〜ど・いい 静かさ
ものづくりの仕事に携わる人なら、あるいは家事や趣味であっても落ち着いて何かを作ろうとした時には、作業部屋の環境にはそれなりに気を使う事だろう。
広さや、道具など物の配置、室温、明るさ、そして音。
湿度や匂いもあるだろうか。
そんな色々を、なるべく良い様に整えて作業にかかることは気分が良いだけではなく、疲労や怪我の予防にもなる。
仕立ての仕事をする部屋は、五畳少しと狭いながらも作業部屋として専用にしていて、引越してきてもうすぐ三年になるが数回の模様替えを経て、おおむね良い様になってきた。
夫と二人で暮らす3DKのアパートは、部屋が三つあって、窓の外がひらけていて、田んぼと小さな森、家が少しとずっと向こうには山の稜線、、晴れていれば霊峰白山もしっかり見える、という眺めがよい点が決め手になって選んだ住まいで、おかげで私の日常的な目のやり場と、作業部屋を確保する事ができた。
住み始めて少し慣れてから仕立ての仕事を再開したのだけれども、以前には無かった、雑音という問題が浮上してきた。
集合住宅でも一軒家でも、ペットのいないひとり暮らしなら家の中、部屋の中は基本的に静かである。
時計の秒針の音や家電のモーター音が気になるのなら、自分の好きな様に工夫する事ができた。
車や飛行機といった壁の外の騒音に関しては、立地条件である意味仕方がないものだからここでは取り上げないとしても、家人の生活音は雑音として、集中して仕事にかかる私にとっては気に障るのであった。
ちなみに作業部屋での裁縫作業の際、私の基準としている静かさは、「床に針の落ちる音が聞き取れる程度」である。
針は小さくてもかなりの危険物である。本数も、まち針と縫い針合わせて五十本くらいは仕事では使うので、仕立てた物に針が残らない様に細心の注意を払うこの職業にとって、針がなくなる一歩手前で見つけられる環境は、とても大切なのである。
職業的に言わなくても、誤って踏んだり自分の服についているのに気づかず家中を歩くと家人も含めて大怪我もしかねない。
それで、床に、私の場合は畳マットを敷いているが、そこに針が落ちる小さなカラカランというような金属の音が分かるくらいの静かさがほしい。
その位だと考え事にも支障がなく、小さな音量のBGMで十分だし、黙々と作業に集中できるのである。
布と一対一で対峙する作業はせめてこの位、静かな方が良い。
今年の夏前あたりから、この作業部屋の付近の音に関して気になるようになってきた。狭いから仕方がない。
何か対策をと思い、月並みだが即効で解決してくれそうな“耳栓”を、この人生で初めて使ってみる事にした。
最初に買ったのはフォーム型と呼ばれる(というのは後で知ったのだけれども）、目の細かいスポンジタイプの耳栓で、「詰め物」感が苦手かなとは思ったが、しかし確かに遮音される。
雑音でザワザワするのがかなり減り、落ち着いた気持ちで作業できるようになった。
また、寝る時にも着けるとぐっすり眠れ、一定の効果を感じた。
しばらくの間同じ耳栓を使っていると、やはり汚れてくるし、弾力もなくなる。
買い替え時だなと思っていた時に、このフォーム型の耳栓は着けるのに少し時間がかかるのと、私の耳には若干大きかったりするところなどがイマイチだったので、同じ物ではなくて他の形を探してみようと思い立った。
薬局などならせいぜいが二〜三種類の品揃えだが、ネットで少し探そうものならあるわあるわ、工夫された耳栓の数々が。（笑）
色々検証した末、千円強の洗練されたデザインのイヤープラグを購入した。
耳栓に詳しい方ならご存知かも知れないが、「流氷の天使」と呼ばれて昔話題になったクリオネという海の生き物に、そっくりな見た目である(商品名も「クリオネ」をもじっている)。
本体は半透明で中心部分だけがピンクなどの色になっていて、小さなつまみの先に柔らかいシリコン状の栓がついた、「耳の穴に詰めるもの」というより「鍋にフタをする」様なイメージの方が近い形、文字通りの耳栓である。
そして他の商品と比べてかなり小さい。
着けたら取れなくなりそう…と買う前から思っていたが、まぁ人気商品だしそうそう事故も無かろう、と着けてみると、、これはかなり良い。
フォーム型は指で先をつぶして耳にはめ、しばらく（説明書によると30秒）押さえていないとフィットしないのだが、プラグ型のこの耳栓は位置さえ決まればすぐに手を離す事ができるし、栓の部分が薄いので「詰め物」感がものすごく少ない。
軽い着け心地と言ったらいいか、耳栓着けてます、という感じがあまりしないのである。
長時間着けると耳がボワンとするというか、軽い痛みの出る事があるがこれはその心配もほぼない。
もちろん、つまみは小さいが全く問題なく指でつまんで外すことができる。
よく出来ているなと思いながら、説明書を読みつつ観察すると、栓の部分が円ではなくてだ円だという事に気がついた。
説明書にも、着ける時に耳栓を回して程よい角度を見つけてください、と言うような事が書いてあり、意識して着けてみると、なるほど角度によって遮音の具合が調節できる。
丸い栓だとしっかり遮音しようとすると耳の奥に押し込んでしまうが、押し込まずに回す事でフィット感を変え、ちょお〜ど・いい遮音具合、静かさにする事ができるのである。
安全かつ閉塞感の少ない、ちょお〜ど・いい静かさを作ることが出来る耳栓。
なかなか面白い。
残念ながら寝る時にはどうしてもプラスチックの固さが当たって、個人的には睡眠にはフォーム型の方が良いと思うけれども、作業の時の耳栓としてはとても優秀、快適な品物に出会うことが出来た。
その後よく行く店で小さめのフォーム型耳栓を見つけ、こうしてこの夏の、暑さと並行して格闘した雑音問題は一応の解決がついたのである。
日常的となると、わざわざ耳栓を着けるのが少ししんどい時もある。
贅沢を言うならば着けなくても静かな方が、近くの森に住む鳥のかわいい鳴き声も耳に入ってきて楽しい。
根本解決を図るのもそれはそれで正しいのかも知れないが、耳栓を着けるといった小さな身動きひとつで困り事はかわせる時がある、と言う事を覚えたし、適当に折り合いをつけて、平穏にここに佇んでいる方が今の私にはちょうどいいのかなと、思うのである。
＊ あとがき ＊
ようやく残暑も後ろ姿…。
一年で一番、季節の変化を感じるとほっとする頃になりましたね。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
先月の通信は夏バテでお休みさせて頂きましたが、また充実させて行きたいと思っています。
秋はたてやの創業季でして、（私の誕生日10月6日付けで開業の届け出をしたので）一年の積み重ねに感謝し、これからどうしていこうかな、と構想を練る時季でもあります。
色々な可能性を考えるのは楽しい事ではありますが、なにせ漂いやすい性格なので、どれかに決める事ほど厳しい事はありません。（笑）
とは言え、耳栓の一件で『ちょお〜ど・いい 静かさ』をある程度自分で作ることが出来る様になりましたし、この仕立て部屋から、快適で、味わい深いものをお届けして参ります。
今後ともお付き合い下さいましたら幸いです。
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お知らせ
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⚫︎ 新保屋での開店日
10月は半ばにイベント出店のため、27日（日）のみとなります。
11月は24日(日）の予定です。
⚫︎ イベント出店
10月12日（土）・13日（日） 『キモノカケルin宝円寺』 に出店いたします！
新保屋でよくご一緒させて頂いてる下駄屋・素輪可さん主催の、リサイクル着物と和小物が集まる市です。
金沢では有名な大きなお寺の本堂が会場で、駐車場もありますし広々とした中でゆったりと楽しんで頂けます。
ぜひ遊びにいらしてくださいね♪
⚫︎ creemaにて福袋企画を準備中
ただ今、手縫い足袋（つつみ〉の福袋企画を準備中です！
この秋で11周年を迎えるたてやの、ささやかながら謝恩企画として〈つつみ〉通年用の2点セットと3点セットを数量限定の特別価格で販売いたします。
カラーをある程度選べて、1点ずつ別々のサイズでもお作りしますので、ご家族やご友人との共同購入にもおすすめです。
まだ日程が未定（10月はじめにはスタート？）なのですが、決まり次第、読者の皆さんには号外の『ちょお〜ど・いい◎ 通信』でいち早くお知らせいたしますね。
こちらもどうぞお楽しみに！
次回は10月23日（水）配信の予定です。
どうぞお楽しみに！
ではまた、お目にかかります。
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ふく拵え たてや
主宰・和裁士／坂口 彩香
石川県能美市寺井町
メール：tateya.wfk@gmail.com
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