第7信− 手縫い足袋の向こう側 −

2024/7/24

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〈ちょうどいい 着る暮らし〉を創造する
 坂口彩香の『ちょお〜ど・いい◎ 通信』  第7信 ー手縫い足袋の向こう側ー
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・2024年7月24日配信・

   

こんにちは!たてやの坂口です。
7月半ばまではじっくりと梅雨を堪能。
そしていよいよ、一日中響き渡る蝉の声を合図に、暑〜い夏が始まりました。
凌ぎにくい暑さでもこの季節だからこその活気や楽しみもありますね。
お祭りに出かけたり、夏服を新調したり、、皆さんは企んでいる事がお有りですか?
上手に涼をとって、元気にいきたいものです。
◇ ◇ ◇
先月の通信では『つつみを解く(ほどく)』と題して、手縫い足袋〈つつみ〉の制作工程を仕上がりの形から逆の順番で、最初の裁断作業に向かって解説するという事をしてみました。
皆さんのお手元にもあるであろう〈つつみ〉が少しずつ解けていって、糸やコハゼといった部品もそれぞれを外して眺め、最終的には平たい布になるというところをご覧頂けたかと思います。
今回はその続きから。
足袋のどんな所が快適なのか、また〈つつみ〉ならではの味わいについて、まとめてみました。
商品を買うその向こう側、もこの折に考えてみたいと思いますよ。
なおボリュームはそんなになく、ライトにお読み頂けます!
   
足袋のちょうどよさ
たてやの理念ー「手で縫ったものを着て暮らす」という、暮らし方を提供する
   ×
洋装の暮らしの人でも気軽に一つから取り入れられて、手縫いの魅力を味わえる小物を作ろう✊
という指針で商品化した手縫い足袋〈つつみ〉。
手縫いのしなやかさ、柔らかさに感動して下さる方は多く、またきちんとコハゼが付いている無地色足袋なことや、足の大きい女性でも好きなカラーが選べるなど、手縫いの特性以外のデザインに関しても気に入って頂けている事も多くあります。
特に、“普段用の足袋”という靴下に代わる生活用品としてとても良いとお喜びの声をたくさん頂いている事が、制作者としては嬉しい限りです。
自分自身の要求から出発したものづくりが、商品化を経て自分以外の人様のお役にも立てているのか…と、人生の旨味というのか、未熟ながらもシャカイジンをしてきて今一番強く味わっています。
   

靴下代わり

ニットの靴下に、違和感を感じている人がこんなにいるとは。
さほどの規模でない個人事業なのに、「日本における靴下の定着具合」にそぐわない気がする割合で、「靴下はとりあえず使ってるけど、あんまり好きでなくてね〜」とおっしゃる方に出会います。
統計学的な話になると違ってくるのかもしれませんが、意外にも共感されたと言うか、変な言い方、こんなに簡単に「靴下代わりに手縫い足袋いかがですか〜?」と言って回れるとは思っていませんでした。
この点は販売を始めてからとても印象的で、足袋が自分の暮らしに〈ちょうどいい〉のではないかと考え、折々に商品を探している方や、代替案が出ていなくても「なんかもうちょっといい靴下的な履きもの、無い…?」と思っている方が多くいるのだなと思いました。
足袋のどんな所が〈ちょうどいい〉のか、〈つつみ〉のコンセプトでもあるよく挙がる2点等について考えてみたいと思います。

蒸れない

オール布帛(織った布)で肌に張り付かない。
通気性の高さが特長で、特に〈つつみ〉は手で縫える範囲の密度の布を使っているため、気密になりません。
肌が湿っているのは不快感もありますし、雑菌の繁殖や刺激に過敏になるなど衛生的にも良くありませんよね。
締めつけない
締めつけが少ないゆるめの靴下もありますが、同時に安定感も無く、足袋の「締めつけない」とはちょっと違うのではないかと思います。
これも平面性の強い布帛製であることによりますが、全体が表裏の二重仕立てというのもポイント。
仕上がりの厚みや重さが同じでも、ごつい生地の1枚仕立てよりも薄い生地の2枚仕立ての方が、柔軟性が出て立体的な体の形にやんわりと沿ってくれます。
ゴムの様に常に体を締めてしまう留め具が無いのも大きい要因ですね。
血流などの体の中の様々な動きを妨げることなく、装いを整えることが出来ます。
健康的?
他にもう一つ、「身体にいい・健康的」という印象をお持ちの方も。
足指に自然に意識が行き、転びにくいなどを実感する方もおいでます。
方々で科学的研究がされて、全身の姿勢や発育と連動して健康効果をうたった草履などもある様ですね。
個人的にはとにかく履いて快さを感じる方にこそ履いてほしいというか、科学的実証は体の感覚に理由を後付けした感じがするので、コンセプトとしては提示していません。
が、上記の2点つまり皮膚の衛生面が保たれ、体内の循環を妨げないという点だけでも十分健康的である事は間違いありません。
包む
蒸れない・締め付けないという足袋の2大特長を、「〜しない」の否定語にせずに表現しようとすると、、『包む』になります。
風呂敷で大切なものを包む、という様な優しさを感じるこの言葉は好きでしたし、由来は?と聞かれる様な難解な名前は付けないという意志があって、他にも候補はありましたが私的にはごく自然な、こんな成り行きで商品名が〈つつみ〉となりました。
以来、展示ボードなどに説明を書いていなくても由来は一度も聞かれた事がありません。(笑)
〈つつみ〉のちょお〜ど・いい◎ ところ
足袋の特長に手縫いの特性が加わった〈つつみ〉は、相乗効果で足袋を履く快適さがより一段と大きい、と自負しています。
しなやかに足に沿うのに、蒸れないという独特のフィット感。
また、これもお使いになっているうちに実感されている事ではないかなと思いますが、手縫いらしさが段々と現れてくるのも面白いところだと思っています。
手縫いらしさというのは分けて話すとするなら2つあって、ひとつは、洗い込むと表れてくる針目の陰影です。
仕立て上がりでは、その様に気をつけて仕上げているのであまり針目というのは目立ちません。
ですが、水をくぐって使い込まれると凹凸が出て、縫った跡がそのまま陰影となって現れます。
その影はミシン縫製品とは違う、柔和な雰囲気を作り出します。
肌触り、肌当たりの点でも違いますが、視覚的にも趣きがあるのです。
履く時や干してあるのを片付ける時など、目に入った時の雰囲気も衣服を印象付ける事がありますから、直に縫ってあるところが見えなくてもこの影がきっちりと手縫い、手仕事である事を証明してくれています。
日用品にふと手仕事の跡を見ると、実際に作った人が誰であれ、あるいは知らなかろうと、人の存在と体温を想います。
   
もう一つの手縫いらしさ、それは緩んでくる事です。
ミシン縫製に比べると手縫いは柔らかく、使ううちに生地がこなれてくるのと同時に縫い目もさらに柔らかくなっていきます。
これは良くも悪くもであって、特に、ぴっちりとシワの無い足袋姿を維持したい方にとっては、緩んでくるのはデメリットかも知れません。
形が崩れない様に、伸びにくく強度のある返し縫いで縫製していますが、若干は伸びて全体が緩んだ感じにどうしてもなってしまう点が、果たして履き心地やコストパフォーマンス的に許容されるかどうか、、。
この点は手縫いの趣きを味わう反面、実用品として採点されるべき部分でもあるで、お客様それぞれに一任したいと思います。
私個人としては緩んでも問題はなく、むしろそうやって変化していくのが自然なモノというか、生き物的で愛おしいと感じています。
デメリットをフォローする、、までには至らないかも知れませんが、例えば緩んできても足首の部分だけでもぴったりになれば少しは安定すると言う事もあります。
裁縫道具をお持ちの方でしたら、タコ糸などでコハゼを掛ける糸をちょうどいい所に新たに付けるなど直してみるのもいいかも知れません。
あとは、くったりと古くなった〈つつみ〉は就寝時用にするのがおすすめです。
私は普段は素足で、足が冷えて眠れない時などに履いて寝ています。
朝までちょお〜ど・よく◎暖かく、汗もかかずに快適です。


手仕事で暮らす

つらつらとあまり普段の販売時には言わない様な事まで書いてしまいました。
何はともあれ、〈つつみ〉を買ってくださる(あるいは仕立てのお仕事を頼んでくださる)事は、手縫い技術にご賛同とご支援を頂いたという事です。
買い物は投票。ありがとうございます。
お陰様をもちまして手縫い仕立ての仕事で暮らす人が少なくともひとり、この街に居る訳です。
小さな足袋ひとつの向こう側にも、人がいます。
オートメーションとデジタル化も悪くはないけれど、素朴な手仕事で暮らす人がいる社会は、私はいいなぁと思うのです。
   
以上、−手縫い足袋の向こう側−でした。
   
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お知らせ

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金沢市・新保屋での開店
7月 28日(日) 10時〜16時半
8月 10(土)・18(日)
9月 1日(日)
時間は10〜16時半の予定ですが、状況により早め開店・早め閉店になる可能性があります。
変更が決まり次第HPのトップページ下方のスケジュールを更新しますので、ご確認頂くかメール等でお問い合わせください。
7/28、8/18は下駄屋の素輪可さんも出店されます。
ご来店お待ちしております。
   
次回は8月28日(水)配信の予定です。
住まいの近辺には古墳が多く、夏休み企画なのか近くの資料館で古代〜現代の衣服展示が行われる事を知り、興味津々。
次回は(間に合ったら)、古代人の着るもの・暮らし方を題材に、ちょお〜ど・いい◎ 私たちの着る暮らし について書きたいと思います。
どうぞお楽しみに!
ではまた、お目にかかります。
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ふく拵え たてや
主宰・和裁士/坂口 彩香
石川県能美市寺井町
メール:tateya.wfk@gmail.com
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